「近所付き合いは大切にする方が良い」という話をします。実際にあったことですが、AさんとBさんはお隣にお住まいでした。これまで何かあれば助け合うという関係をお持ちで、 良い近所付き合いをされていました。ある日、Bさんが家を建替されることになりました。Bさんは、Aさん宅の南側に2階建ての家を新しく3階建てにされたので、Aさん宅に影を落とし、Aさん宅の物干し場に日があたらなくなり、洗濯物が乾きにくくなったのです。台所にも日が差さなくなって、家の中が日中でも暗くなりました。
さて、皆さんならこんなとき、どうなさいますか?Bさんに補償を求めますか?
BさんはAさん宅の事情を察知し、申し訳なく思われ、謝罪のうえ金銭解決をしようとされましたが、Aさんは金銭をお受けになりませんでした。Aさんにすれば言いたいこともあったかと思うのですが、Bさんの気持ちだけをいただかれ、近所付き合いを優先されたのです。
ある日、Bさん宅の事情で引越しをされることになりました。BさんはAさんの息子さんが家を購入しようと探していることをご存知でしたから、一番最初に「この家を買っていただけませんか?」とAさんに話をされました。Aさん宅にとっては非常にありがたい話で、地続きで土地の面積も広くなりますし、資産価値が上がります。息子さんが隣に住むことは願ってもないことです。ですから迷いなく購入を決意されました。値段はBさんのご好意で少し安めです。
もし、AさんがBさんともめていたら、こうはならなかったと思います。けんかでもしていたら、Bさんは意地でも他人に売っていたか、あるいはAさんには高めの値段提示をしたことでしょう。目先のことより近所のお付き合いを優先されたAさんの気持ちをBさんも理解され、ここでお返しをされたのだと思います。
利己主義がはびこる世の中になって来ましたが、それに同調することなく相手を思いやると、それがいずれ我が身に返ってくるというお話でした。 和合 実