相続税対策としてのマンション建設は、立地の適合性をしっかり考えないと難しく、将来のことも考えて安易に借金をして建てるべきでないと、もう10年ぐらい前から私は言っていますが、
いままた、相続税が上がるからと、その対策として、立地も考えずにマンション・アパートの建設を勧める建設会社等の新聞広告が多く見受けられます。
相続税は、無理に減らすのではなく、支払う準備をするほうが無難です。先を見ないでマンションやアパートを建てる地主さんが、将来に禍根を残すことにならなければいいがと、強く思います。
5億円の借金をしてマンションを建てた親が亡くなり、相続税の支払いはなくて済んだようですが、それを相続をした娘さんが売却しようとされたのですが、不動産会社に売値を算定してもらわれたところ、
その売買金額は借金の残額より低いもので、売れば借金だけが残り、そうかといって、現状借金の返済額が、家賃の受取額とほとんど変わらず、このままいくと、数年以内に持ち出しとなって、
支払うことができなくなるという話をお聞きしました。
この状況を打開する方法はないでしょうかという質問がありましたが、簡単にはいきません。損切売却をして借金を残しても、その支払いのため、売却できる他の不動産があればまだいいのですが、後は自宅ということで、
手詰まり状態に陥っています。年齢的にも、間もなくその方のご主人も定年を迎えられる人ですから、老後はかなり厳しい状態になることが予想されます。
これは他人事ではないのです。こういう人が今後ますます増えていくと思われます。なぜなら、通常新築時に20年から30年で借入するわけですから、その間、人口はどんどん減り、いま賃貸マンションに入っている人も、
いずれは分譲マンションや戸建を買われて、賃貸に住む人が減り続けるわけです。マンション経営をしっかりしないと、空室率は上がり、賃料が下がって、持ちこたえることができなくなります。
いわば、賃貸マンションのオーナーの生き残り合戦がすでに始まっているのです。単に相続税の減額を目的に、借金を作ってマンションを建てるという対策は、今後は特に安易にやってはならないのです。
時代が変わっています。失敗する人の多くは、先祖伝来の土地を守るということに固執している人です。そこが業者の付け入りどころなわけです。その固執は失敗の最大の要因です。
税理士にも勧められたという人もいるかもしれませんが、もっといいやり方を提案できる税理士さんにかかってほしいものです。
マンション一棟ものの物件を購入して賃貸業を始めようとする人と、相続税対策のためにマンションオーナーになった人とでは、意識に大きく差があります。勉強をしているのは前者で、後者の人は全くと言っていいほど、
勉強をしない人が多いのです。前者は場所を選べますが、後者はそれができません。すなわち、スタート時点から優劣がついているのです。現実は厳しいものです。和合実