「不動産バブル再来」は本当か?

H18.8.23 日経朝刊
大阪の目抜き通り、それが御堂筋。特にJR大阪駅梅田地区から難波地区までの約2キロが大阪CITYの中心街です。
 この通り沿いには大手企業の本社や支社が軒を連ね、秋には銀杏並木の美しさが目を惹きます。道路幅は50M、車は南向きの一方通行です。それでも混雑することがないとは言えません。この道路の下には地下鉄御堂筋線が走り、梅田-淀屋橋-本町-心斎橋-難波のこの間、通勤時間帯はいつも満員です。梅田は大阪の玄関口で、繁華街も近く、エンターテイメント、ショッピング、ビジネス、何でもありのエリアです。通称ここを「キタ」と呼びます。淀屋橋には市役所や日銀大阪支店があり、ここから本町までが有名大手企業の牙城です。大阪ではこの間の御堂筋沿いに会社があるというのは、一つのステイタスなのです。企業側に取りましては、ここに会社を構えるだけで、いい人材が採用できるというメリットもあります。それ程御堂筋というのは関西ではメジャーなのです。私も若いときは御堂筋沿いの企業で働いている人に、一種、羨望の思いを抱いていましたよ。本町から心斎橋に向かうに従い、雰囲気はビジネスからショッピング、エンターテイメント色が出てきます。心斎橋周辺はブランドショップの旗艦店の並ぶところでもあります。そして心斎橋から難波は通称「ミナミ」と呼ばれ、広い範囲の繁華街があります。大阪の「くいだおれ」発祥の地です。キタには「北の文化」が、ミナミには「南の文化」があります。大阪に来られたときは、この二者の、空気の違いを肌で感じて帰って頂きたいと思います。

話は変わり、この大阪の中心部、大通り沿いの一等地の地価が2003年ごろ1坪、1000万円前後から、2005年には3000万円台に上昇し、今年4300万円で取引されたという記事が掲載されました。バブル経済後の高値です。それでもバブル経済期は1億円を越えていましたからまだ半分以下です。不動産取引が活発化し、転売されるごとに値が釣り上がっていきます。これは「バブルの再来」という見方もありますが、私はやっと正当に認められる価額になったと見ています。先ほども言いましたように御堂筋は別格です。収益だけでは計れないステイタスがあるのです。御堂筋より1~2本入った筋や通りでこの金額につられ、地価が仮に大幅上昇しましたら、それはバブルです。いずれまた崩壊すると思います。なぜなら収益性を無視した価額は、長くは続かないと見ているからです。私はそこを注視しています。大阪中心街より、電車で1時間も行きますと、地価の上昇とは縁遠いエリアもあります。ですから私は「ない」と思いますが、仮に関西全域で地価が大幅上昇するということがありましても、必ずまた下がると信じていますから、冷静に地価の動きを見ています。大阪から電車で1時間のエリアというのは、イメージですが東京から2時間のエリア、名古屋から30分のエリアという感じです。関西圏は首都圏と違い、郊外地価の上昇があっても、そう大きな上昇ではないと見ています。現在求められる収益性の下限値を無視して取引されましても、長くは続かないと思うのです。近い将来、景気の回復がはっきりしましても、郊外賃料は上昇しない、あるいは上昇しても微々たるもの、反対にまだ下がり傾向というのが私の見方です。その理由は関西エリアの人口減が鮮明になりつつあるからです。新築マンションやアパートはまだまだ建ちます。すでに住居は供給過剰なのにそれでも建ちます。人口が流入しない限り、関西圏の地価は都心部を除き、バブル期の半分の地価に戻ることもないと思っています。みなさんはどう思いますか?