数年前、土地への執着心の非常に強い人に会ったときの話です。これまでもそういう人にも少なからずお会いしてきましたが、この方は非常に印象に残っています。 土地への執着心の強い方に共通する点は、その土地を相続で取得されているということです。売却することは、先祖に申し訳ないと思われていたり、世間体を気にされて売却をされないわけです。
そのお気持ちは、私もよくわかります。そういうお考えの何人もの方々にお会いしてきました。ここでは経済的合理性の話は通じません。
でも、将来、大変なことになるかもしれないことが予測できても、何もしないのは、逆に先祖に申し訳ないことではないかと、私は思っています。
先の人の話に戻します。この方は、相続でなく自ら土地を買われているのです。客観的に見て、誰が見てもといったほうがいいかもしれませんが、駅前の角地を買えるチャンスを棒に振って、田舎で土地を買っていたそうです。自分で利用をしているわけでなく、人に貸されています。でも、収益といえるものではありません。
将来の食料難に備えて、畑をするために取得されているのかと思いましたら、まったくそんな発想ではありません。土地は広いほうがいいという発想が根底にありそうです。
買い続けて、売るという発想はまったくありません。維持費用はかかっています。いずれまた相続が発生します。残された人のことも考えておくのも所有者の勤めかと思います。
難しいことかもしれませんが、土地に限らず、執着心を持たない生き方がいいですね。死ぬとき、あの世に形あるものは何ももっていけませんからね。 和合実